レビュー

『折伏 創価学会の思想と行動』鶴見俊輔、森秀人、柳田邦夫、しまねきよし

昨年、玉野和志氏(首都大学東京教授)が『創価学会の研究』(講談社現代新書、2008年)を上梓。私は『東京のローカル・コミュニティ ある町の物語 1900-80』(東京大学出版会、2005年)を読んでいたので結構期待していた。一度メールのやり取りをしたことが…

イエロージャーナリズムにも良心は存在する

埼玉県で起こった桶川ストーカー事件。ストーカー規正法のきっかけとなった犯罪である。容疑者を特定し、居場所までつきとめたのは写真週刊誌『FOUCUS』の記者だった。 被害女性は、両親を伴って何度も埼玉県上尾警察署へ足を運んで相談をしていた。ところが…

『世界史の誕生』岡田英弘

『〈狐〉が選んだ入門書』で紹介されていた本である。50ページほど読んだが、こいつあ凄い。まとめて入力するのが惜しまれるため、『青い空』同様、独立した記事として紹介しようと思う。 岡田英弘

『ホテル・ルワンダ』『ルワンダの涙』

『ホテル・ルワンダ』は封切りで見た時と大きく所感が変わった。「そんな生やさしい殺され方ではなかったはずだ」と。『ルワンダの涙』も同様。どちらも国連軍に守られたエリアからの視点になるので、“塀の外”で起こっている出来事を表面的になぞっただけで…

『溺れるものと救われるもの』プリーモ・レーヴィ

3分の1読了。恥ずかしながらプリーモ・レーヴィの作品を読むのは初めて。15年ほど前に買った『アウシュヴィッツは終わらない あるイタリア人生存者の考察』も読んでなかった。ナチスものを読むには体力が必要だ。また、V・E・フランクルの『夜と霧 ドイツ強…

『日本の税金』三木義一

今後の政治テーマとして税金がピックアップされてくることもあり、読んでみた。著者は立命館大学の教授。文章がわかりやすく、質のよい市民講座を受けているような印象を受けた。税法の複雑性と不公平性がよく理解できる。ガソリン暫定税率にも触れており、…

『獄窓記』山本譲司

予想していたとはいえ、やはり『累犯障害者 獄の中の不条理』の後に読んでしまうと、インパクトの弱さが否めない。それでも、文章の上手さでぐいぐい読ませる。先に読んでいれば、それなりの衝撃を受けたことだろう。 自伝的色彩が強く、菅直人氏の秘書にな…

『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』福田ますみ

今時は教員になんかなるもんじゃないね。一読すると、本気でそう思うようになる。所謂、モンスターペアレントの実態を描いたルポ。ただし、その辺のバカ親と違うのは、この事件がマスコミを始めとするメディアで取り上げられ、原告弁護団に550人もの弁護士が…

『ビヨンド・リスク 世界のクライマー17人が語る冒険の思想』ニコラス・オコネル

タイトルは「リスクの向こう側」という意味か。既に引退した登山家も多いが、これっぽっちも老いを感じさせない。メラメラと燃え続ける何かがある。語られているのは「過去の物語」ではなく、まさに「思想」だ。 世界屈指のクライマーのインタビュー集。それ…

『青い空』海老沢泰久

土曜日一日で600ページまで読んで、100ページだけ残しておいた。読み終えるのが惜しかったからだ。歴史小説をこれほど堪能したのは飯嶋和一以来か。傑作と言っておこう。 日本の宗教史を縦糸に、幕末の日本を横糸にして編まれた見事な物語。ちょうど巻半ばで…

『武装解除 紛争屋が見た世界』伊勢崎賢治

威勢がいい。喧嘩も強そうだ。国際NGOに身を置き、世界各地で紛争処理の指揮を執ってきた人物である。白々しい理想もなければ、七面倒な平和理論もない。伊勢崎氏は素早く現実を受け入れ、具体的に武装解除を行う実務家である。平和は「説くもの」ではない。…

『最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか』ジェームズ・R・チャイルズ

50あまりの事故を取り上げ、その原因を検証。いずれも、小さなミスと油断が取り返しのつかない大事故、大惨事の導火線になっている。専門用語が多いが、達意の文章で読ませる。少しばかり難を言えば、過去の歴史を引っ張り出した際に時系列がわかりにくくな…

『累犯障害者 獄の中の不条理』山本譲司

とにかく読んでもらいたい。そして、家族や友人にも読ませて欲しい。衝撃などという生やさしいレベルではない。登場人物全員によって袋叩きにされたような痛みを覚えた。障害者が置かれた現状を知れ! この国に政治家どもが口にするセーフティーネットなんか…

『なぜ美人ばかりが得をするのか』ナンシー・エトコフ

「まともなコラムニストが読めば、死ぬまでネタには困らないだろう」――と思うほど、てんこ盛りの内容だ。タイトルはやや軽薄だが、内容は“濃厚なチョコレートケーキ”にも似ていて、喉の渇きを覚えるほどだ。著者は心理学者だが、守備範囲の広さ、興味の多様…

『仕掛け、壊し、奪い去るアメリカの論理 マネーの時代を生きる君たちへ 原田武夫の東大講義録』原田武夫

最近の日米関係を通して綴る金融経済入門。右ページが全て用語解説となっていて初心者でもわかりやすい構成。著者は元外務官僚で、政治の舞台裏からアメリカの意図を読み解いている。尚、この講義は正規単位として認められている。アメリカの巧妙な手口は、…

『議論のウソ』小笠原喜康

文章がやや生硬なのは大学教授のせいか。メディア・リテラシーの手引きといった内容。私としては少々物足りなかった。「権威のウソ」と題して、『ゲーム脳の恐怖』というベストセラーを俎上(そじょう)に乗せて、バッサバッサと斬りまくっている。ゲームを…

『海馬 脳は疲れない』池谷裕二、糸井重里

ちょっと前のベストセラーぐらいに思っていたら、既に5年も経っていて驚いた。「脳味噌モノ」といえば、今は池谷裕二氏が旬。私は今回始めて読んだ次第。 対談なんでスイスイ読める。錯覚の図などが盛り込まれていてバランスもいい。個人的に糸井重里は嫌い…

『急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則』(旧題『ティッピング・ポイント』)マルコム・グラッドウェル

何という安直なタイトルか。せっかくの名著復刊が台無しだ。ま、テレビCMを大量に流す「マーケット覇権主義」企業の出版部門だから仕方がないか(ソフトバンク文庫)。 「読書は昂奮だ!」というエキサイティングな日々を過ごすようになったのも、元はと言え…

『迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか』シャロン・モアレム、ジョナサン・プリンス

祖父がアルツハイマーになった。著者が15歳の時だ。祖父が元気な頃、「体調がよくなる」と言って好んで献血をしていた。その理由を学校の先生や、かかりつけの医師に尋ねてみたがわからなかった。15歳の少年は医学図書館へ足繁く通い、遂にヘモクロマトーシ…

『予言体系 釈迦と日蓮 やはり世界は予言で動いている』五島勉

やや不正確な記述も目立つが、よく調べている。助師・青年3級のメンバーで、『小説 日蓮大聖人』(湊邦三著)を読んでいない人なら、そこそこ勉強になると思うよ。 しかしここで、「立正安国論」を思い出してみてください。あの中で、またあの前後の訴えの中…

『あなたのなかのサル 霊長類学者が明かす「人間らしさ」の起源』フランス・ドゥ・ヴァール

「畜生界」の定義が変わるかも知れない、と思わせる内容。取り上げられているのはチンパンジーとボノボ。同じ類人猿でも全く性格が異なっている。わかりやすく言えば、チンパンジーは暴力的な策略家で、ボノボはスケベな平和主義者。社会構造も違っていて、…

『新ネットワーク思考 世界のしくみを読み解く』アルバート=ラズロ・バラバシ

不勉強を恥じておこう。既に紹介した『複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線』は本書のパクリだった。ただし、読みやすさではマーク・ブキャナンに軍配が上がる。いずれにしてもこの2冊の作品は、グローバリズムを避けられない現代にあっては不…

『複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線』マーク・ブキャナン

▼「奇遇だね」「世間は狭いなあ」。年末年始、旧交を温めたり、新しい出会いを結ぶなかで、そんな会話を交わした人も多いだろう▼実は、この実感について学問的な研究がある。「六次の隔たり」と言って、世界のどんな人も、友人・知人をたどると、6人でつなが…

『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』上杉隆

「人間は物語に生きる動物である」――昨年以来、私はこう考えるに至った。思想とは物語を紡ぎ出す源泉であり、その究極が「縁起」だと思う。 前評判の高かった本書だが、一読して圧倒された。とにかく、「物語を編む力」が凄い。この作品は間違いなく、10年、…

『親なるもの 断崖』曽根富美子

日本漫画家協会賞の優秀賞に輝き、曽根富美子の名を不動にした名作を読んだ。長らく絶版になっていたが、やっと復刊された。昭和初期の遊郭が史実に基づいて描かれている。 一度目で挫けた。意を決して再読したが、私の精神力が耐え切れず、飛ばし読みをする…

『不肖・宮嶋 メディアのウソ、教えたる!』宮嶋茂樹

報道カメラマンの宮嶋茂樹氏が、中学生向けにメディアリテラシーを説いた本。実にわかりやすく丁寧な文章が著者の人間性を表している。未来部担当者、教育部は必読。中学の教科書に採用してもらいたいぐらいだ。巻末では、自分がカメラマンになった経緯を紹…

『セブン-イレブンおでん部会 ヒット商品開発の裏側』吉岡秀子

セブン-イレブンの礼賛本。褒めるからにはそれなりの理由がある。 1974年、江東区の豊洲に第1号店をオープン。6年後の1980年に1000店舗を達成し、2003年には遂に1万店舗を突破したというのだから凄い。破竹の快進撃だ。 小売業で業績がいい会社は、必ず緻密…

『オフレコ!』Vol.5

『オフレコ!』は田原総一朗氏責任編集の雑誌だ。最新号に、川田洋一副会長(東洋哲学研究所所長)と斉藤克司・前教学部長のインタビューが掲載されていた。聞き手である田原氏の難癖の付け方が見事である(笑)。例の如く、歯に衣着せぬ舌鋒が鋭い。何とな…

『マイティ・ハート 新聞記者ダニエル・パールの勇気ある生と死』マリアンヌ・パール

アンジェリーナ・ジョリー主演で映画化され、11月23日より公開中。 訳者あとがき(高濱賛) 普通の精神の持ち主であれば、その悪夢など二度と思い出したくもないだろうし、ましてや当時の経過を克明にたどり、本を書くなどということは考えられないはずだ。…

「千手観音」中国障害者芸術団

圧巻の舞踊である。更に驚愕させられるのは、彼女達が聴覚障害者であることだ。中国障害者芸術団による千手観音。耳が不自由な彼女達は、振動と共演者同士の息だけを頼りに、絶妙なパフォーマンスを展開している。千手観音は観音菩薩の化身。「千の手」には“…