歴史

遊牧民は自由で気位が高い

遊牧生活はこうした性質のものなので、一箇所に人口が集中すると、草の量が足りなくなって、生活を支えるのに十分な数の家畜が飼えない。そのため一緒に遊牧するのは、せいぜい数家族どまりである。言い換えれば、遊牧民が暮らしていくためには、大きな組織…

ローマは帝国ではなかった

そういうわけで、ローマ「帝国」とローマ「皇帝」はどちらも誤訳で、明治時代の日本人が、中国史の知識をあてはめて西洋史を理解しようとした苦心の産物ではあるが、こうした誤訳は、現在に至るまで、日本人の世界史の理解を誤るという、悪い影響を残してい…

ロシアもモンゴル帝国の継承国家

ロシアも、モンゴル帝国の継承国家である。これは、東スラヴ人とフィン人を、スカンディナヴィアから来たルーシが支配して作った国である。しかしルーシには統一がなく、リューリク家の公たちがばらばらに、それぞれの都市を支配していて、1237年のモンゴル…

民族という観念は19世紀に生まれた

民族という観念は、19世紀に発生した、ごく新しいものである。現在の世界で通用している国家の観念自体も新しいもので、古くは国家に当たるものは、君主の財産の観念であった。フランス革命で初めて、領地・領民から君主を抜きにした「国家」の観念がはっき…

大陸帝国と海洋帝国

モンゴル帝国の弱点は、それが大陸帝国であることにあった。陸上輸送のコストは、水上輸送に比べてはるかに大きく、その差は遠距離になればなるほど大きくなる。その点、海洋帝国は、港を要所要所に確保するだけで、陸軍に比べて小さな海軍力で航路の制海権…

海洋国家が栄える

20世紀末の現在では、世界の三大勢力はアメリカ合衆国であり、日本であり、ドイツを筆頭とするECである。これらはすべて、本質的には海洋国家である。アメリカ合衆国は大陸国家のように見えるが、実はその文明は大西洋岸と太平洋岸に集中していて、中間は空…

ロシアと中国にはモンゴル帝国支配の後遺症が

ロシア人と中国人は、いずれも中央ユーラシアの草原の道の両端に接続する地域に住んでいる。そのため両国民とも、国民形成以前から繰り返し繰り返し、草原の遊牧民の侵入と支配を受けて、その深刻な影響の結果、現在の姿を取った。長い長い間、ロシアでも中…

マルクス主義者に都合が悪い中国史

ヨーロッパ式の時代区分が中国では成立しないということは、日本のマルクス主義の歴史学者にとって何とも都合の悪いことであった。歴史が時代ごとの段階を踏んで一定の方向に「発展」するのでなければ、最終段階の共産主義社会に到達する見通しは立たないわ…

モンゴル帝国が中国文明と地中海文明を結びつけた

歴史は文化であり、それを産み出した文明がおおう地域によって、通用範囲が決まるものである。歴史を持つ二大文明である地中海=ヨーロッパ文明と中国文明は、それぞれ前5世紀と前2世紀末に固有の歴史を産み出してから、12世紀に至るまで、それぞれの地域で…

中央ユーラシアから世界史は始まる

ここに、地中海型の歴史と中国型の歴史、東洋史と西洋史の矛盾を解決し、単一の世界史に到達する道のヒントがある。それは、中央ユーラシアの草原の道である。 【『世界史の誕生』岡田英弘】 岡田英弘

世界史とはモンゴル帝国以後の時代

ヘーロドトスと『旧約聖書』、「ヨハネの黙示録」に由来する地中海=西ヨーロッパ型の歴史の枠組みと、『史記』と『資治通鑑』に由来する中国型の歴史の枠組みをともに乗り越えて、単なる東洋史と西洋史のごちゃ混ぜでない、首尾一貫した世界史を叙述しよう…

ヘーロドトス以前に歴史の観念はなかった

地中海文明の「歴史の父」は、前5世紀のギリシア人、ヘーロドトスである。ヘーロドトスは、アナトリアのエーゲ海岸の町ハリカルナッソス(現在のトルコ共和国のボドルム)の出身で、その著書『ヒストリアイ』は、ペルシア戦争の物語である。 「ヒストリア」…

ヨーロッパ対アジア 敵対の歴史観

この『ヒストリアイ』の書き出しでヘーロドトスが、ペルシア人の学者の説にかこつけて打ち出している見方は、世界はヨーロッパとアジアの二つにはっきり分かれ、ヨーロッパはアジアと、大昔から対立、抗争して来たものだ、という主張である。この見方が地中…

地中海文明ではアジアとヨーロッパの対立こそが歴史の主題

ヘーロドトスの著書が、地中海文明が産み出した最初の歴史であったために、アジアとヨーロッパの対立こそが歴史の主題であり、アジアに対するヨーロッパの勝利が歴史の宿命である、という歴史観が、不幸なことに確立してしまった。この見方が、現在に至るま…

『旧約聖書』は歴史ではない

これは神学ではあるが、歴史ではない。百歩を譲って、これも一種の歴史だということにしても、ヤハヴェはイスラエル人だけの神であり、『旧約聖書』はヤハヴェ神とイスラエル人だけについての書物なのだから、せいぜい国史、それもひどく偏った、空想的な国…

ユダヤ人のアイデンティティ

ユダヤ人のアイデンティティは、このバビロニア捕囚の時代に始まったものである。 【『世界史の誕生』岡田英弘】 岡田英弘

国家によるキリスト教への迫害

ユダヤ人のための宗教であったキリスト教が、ユダヤ人以外のローマ帝国の人々にも広まり、国家によるキリスト教徒の迫害も始まった。殉教者の事蹟のうち、伝説ではなくて事実であることが確かなものは、みな2世紀の後半から後である。 ついでに言うと、俗説…

ヨーロッパは神であり善、アジアはサタンであり悪という構図

ところで、不幸なことに、ヘーロドトスの対決の歴史観と、キリスト教の歴史観とは、きわめて重要な点で一致していた。それは、「ヨハネの黙示録」の、世界は善の原理と悪の原理の戦場である、という二元論である。これとヘーロドトスの、ヨーロッパとアジア…

「歴史」は「ヒストリー」の訳語として作られた日本語

「歴史」という言葉は、漢字で書いてはあるが、中国語起源のものではない。現代中国語で「歴史」(リーシー)というのは、日本語からの借用である。日本語の「歴史」は、英語の「ヒストリー」の訳語として明治時代に新たに作られた言葉で、それを1894〜5年の…

「正統」と「伝統」

そうした実状にも拘らず、『史記』が夏・殷・周を、実際に中国を統治した秦の始皇帝や漢の皇帝たちと並べて、「本紀」に列しているのは、「正統」という理論に基づくものである。いかなる政治勢力でも、実力だけでは支配は不可能であり、被支配者の同意を得…

元号は君主が時間の支配者であることを示す

この「正統」の観念のもう一つの表れは、時間の数え方である。君主の在位年数を基準にして年を名付ける紀年法では、即位の年(即位称元)、もしくはその翌年(踰〈ゆ〉年称元)を元年とするが、これは君主が時間の支配者であることを示す。初めは一代に元年…

インド系言語はアーリア人によるもの

西の方でヨーロッパに入るのとほぼ同時に、南の方でも、インド・ヨーロッパ語を話すアーリア人が、イラン高原から南下して、インド亜大陸の北部に入り、ドラヴィダ語を話していたインダス文明のハラッパーやモヘーンジョ・ダロなどの都市を滅亡させた。この…

インド文明は歴史を持たなかった

インド文明には都市があり、王権があり、文字があったのだから、歴史も成立してよさそうなものである。それなのに、歴史という文化がインドについに生まれなかったのはなぜか。この謎を解く鍵は、インド人の宗教にある。 イスラム教が入って来る前からのイン…

対抗文明としての歴史文化

歴史という文化は、地中海世界と中国世界だけに、それぞれ独立に発生したものである。本来、歴史のある文明は、地中海文明と中国文明だけである。それ以外の文明に歴史がある場合は、歴史のある文明から分かれて独立した文明の場合か、すでに歴史のある文明…

歴史は強力な武器

歴史のある文明と、歴史のない文明が対立するとき、常に歴史のある文明の方が有利である。一つの理由は、紛争が起これば、歴史のある文明は、「この問題には、これこれしかじかの由来があるので、その経緯から言えば、自分の方が正当である」と主張できる。…

歴史のないアメリカ合衆国は強大な軍事力で対抗

日本と西ヨーロッパは、歴史のある文明である。これに対して、アメリカ合衆国は、18世紀の当初から、歴史を切り捨てて、民主主義のイデオロギーに基づいて建国した国家である。現在は解体したソ連が、マルクス主義のイデオロギーに基づいて建国した国家であ…

『世界史の誕生』岡田英弘

『〈狐〉が選んだ入門書』で紹介されていた本である。50ページほど読んだが、こいつあ凄い。まとめて入力するのが惜しまれるため、『青い空』同様、独立した記事として紹介しようと思う。 岡田英弘

「歴史」は中国世界と地中海世界から誕生した

必要なのは、筋道の通った世界史を新たに創り出すことである。 そのためにはまず、歴史が最初から普遍的な性質のものではなく、東洋史を産み出した中国世界と、西洋史を産み出した地中海世界において、それぞれの地域に特有な文化であることを、はっきり認識…

西暦1200年前後、インドではイスラム教が優勢に

ヒマラヤ山脈の南の北インドの平原では、それまで仏教が優勢であったが、この20年ほど前から、グール家のムハンマドという、イスラム教徒のアフガン人の首領が、騎兵隊を率いてアフガニスタンから北インドに侵入して来て、インド人の王たちを征服し、広大な…

13世紀初頭、現在の西欧諸国は成立していなかった

13世紀の初めの西ヨーロッパの情勢をひと口で説明すると、イタリアという国もなく、ドイツという国もなく、フランスという国もなく、英国という国もなく、スペインという国もなかった、ということになる。こういう、今日の我々になじみの国々は、みんなもっ…