人間として評価されよ

鮨屋へ来て、鮨ができるようになるのは当たり前なんだ。要はそういうことではない。しょせん鮨屋というものも、男女ある人間の、その半分の男の、そのまた無数にある職のなかの一つでしかない。そういう狭い範囲のなかで一人前とか、二人前だとかいうような小さな評価はよしなさい。それよりも人間としての評価の方に比重をおいてものを考えるようにしたほうが、のちのちおまえのためになるよ。人間としての評価ということになると、鮨屋だから鮨をにぎっているというだけでは足らないんだ。目を大きく外に開いて、いろいろ知識を身につけておけば、将来、おまえがお客様のお相手をさしていただくときになって、ったよりも役立つことに気がつくことがあるよ」


【『神田鶴八鮨ばなし』師岡幸夫〈もろおか・ゆきお〉(草思社1986年/新潮文庫2003年)】


神田鶴八鮨ばなし (新潮文庫)