「21世紀文明と大乗仏教」ハーバード大学での記念講演

 教では「共生」を「縁起」と説きます。「縁起」が、縁りて起こると書くように、人間界であれ自然界であれ、単独で存在しているものはなく、すべてが互いに縁となりながら現象界を形成している。


 すなわち、事象のありのままの姿は、個別というよりも関係や相互依存を根底としている。


 一切の生きとし生けるものは、互いに関係し依存し合いながら、生きた一つのコスモス(内的調和)、哲学的にいうならば、味連関の構造を成しているというのが、大乗教の自然観の骨格なのであります。


 かつて、ゲーテは『ファウスト』で「あらゆるものが一個の全体を織りなしている。一つ一つがたがいに生きてはたらいている」(大山定一訳、『ゲーテ全集 第2巻』所収、人文書院)と語りました。この教的ともいうべき知見を、若き友人エッカーマンは「予はするが実証がない」(『ゲーテとの対話』下巻、神保光太郎訳、角川文庫)と評しましたが、その後、百数十年の歳とともに、かのゲーテの、更には教の演繹的発の先見をうかがわせつつあるようです。


【「21世紀と大乗仏教」米ハーバード大学講演/1993-09-24