息を吹き返す「族記者」たち

「08年度予算・消費増税」考


《ジャーナリスト・川邊克朗


「族記者」たちが再び霞が関や永田町界隈を徘徊している。記者クラブを根とする彼らは、「族議員」と同じく、単なる特定の政策分野に明るい専門記者として各省庁の応援団や利益代弁者の役割を果たすだけではなく、省庁からは“特ダネ”の提供はもちろん、審議会等の委員や専門委員として遇され、退職後は再就職先の面倒までみてもらおうという輩である。
 そんな彼らが、2008年度予算の概算要求締め切りが迫った8、「医師不足に160億円」(厚生労働省)、「地方ネット網を整備」(総務省)、「整備新幹線、789億円概算要求」(国土交通省)等々の、各省庁の“目玉予算”獲得に向けたアドバルーン記事を次々と打ち上げ、なかでも7参院選挙までは封印されていた消費増税論議では、全国紙を中に、「『最大30兆円増税内閣府試算」などと無批判に報じ、今や財務省政府税制調査会等が公然と「消費増税の必要」を訴える環境づくりの露払い役となった。
 記者クラブ制度を巡っては、「官・報」癒着の温床になっているとして、かねてから内外ともに批判が集中している。通常、官僚は所管界の企、利益団体等から「情報」を吸い上げて政策立案し、そしてその実現に向けて役所にとって都合の良い情報だけを記者クラブを通じて一般に流布させてきた。この世論誘導のキーマンとなるのが記者クラブのベテラン記者である「族記者」の面々である。
 ところが、旧大蔵スキャンダルを機に成立した国家公務員倫理法(2000年4施行)によって、それまで界との「情報交換」の場となっていた「接待」が著しく減少したため、本当の「情報」の入手が困となり、同時に「官」から「民」へ、との時代的風潮が逆風となって、目敏い官僚たちは早々にサボタージュを決め込んでしまった。
 しかも漂流を続ける、「行政」と「政治」、更に「メディア」のすき間を衝いて忽然と登場した小泉内閣(01年4発足)の強烈なリーダー・シップによって瞬く間に政策決定の主導権が「官邸」に奪われ、「情報」もすべて各省庁から官邸に集中することになる。この政策決定過程の劇的変化によって、従来の「政・官・報」の既得権は完全に破壊され、当然その恵に浴してきた族記者もすっかり活躍する場を失ってしまった。
 ちなみに、この時代に跋扈(ばっこ)したのがテレビの人気バラエティー番組「なんでも鑑定団」をもじった「なんでも(首相)官邸団」である。よりな情報を聞き付けると、即首相にご注進する学者・文化人で、橋本内閣の頃からか、私たち仲間うちで流行り出した言葉だった。しかし官僚組織との協調路線へ再シフトした今の福田内閣になって、「なんでも官邸団」は姿を消した。
 一方「族記者」と生態を同じくする「派閥記者」とて、小泉首相が長年“政治アウトロー”だった故に、既存の大手メディアに何ら気兼ねしない、民放テレビ・ラジオ、スポーツ紙、雑誌重視のメディア対策に翻弄され、遂には特ダネからも見放された大手メディアは逆ギレとなって構造改革路線の小泉首相に「市場原理主義者」等のレッテルを張り、倒閣運動へと駆り立てることになる。
 奇しくも、先の福田自民党小沢民主党の「大連立」構劇の仕掛け人として派閥記者全盛時代の元“大ボス”の暗躍が罷り通ったことは、最近の「族記者」の復活と軌を一にするものである。
 とはいえ、いずれも記者クラブ制度に巣くい、既得権益を“私物化”する、メディア改革とはおよそ無縁な“守旧派”だけに、12の予算編成大詰めを目前にした「族記者」たちの“健筆”ぶりを読者の皆様も、しっかり目を凝らしてお読みいただきたい。


【「メディア評」/聖教新聞 2007-11-27】


 いやはや、これは勉強になった。